不眠症の原因と解消法
こんにちは!トレーナーの山内です。
皆さん毎日7時間は寝れていますか?
そこのあなた!Youtubeやネットフリックスを見て夜更かししてません・・よね?笑
ダイエットを成功させるためには良質な睡眠が非常に重要なので、
必ずカウンセリングの際に「何時間寝ていますか?」「寝付きは良いですか?」と聞いています。
なぜ良質な睡眠が大事かというと、睡眠不足は食欲を高めると報告されているからです。
睡眠不足は食欲を高めて体重の増加に寄与する(論文はこちら)
→睡眠不足になると、食欲を増進させるホルモン(グレリン)が増加し、食欲を抑えるホルモン(レプチン)が低下します。
この研究では、平均睡眠時間が6.5時間未満の方を集めて2週間ほど8.5時間に伸ばしたら、甘いものや塩辛いものへの欲求が62%減ったと報告されています。
実際、富山県の児童およそ1万人を対象にした調査では、睡眠不足の子供は肥満傾向にあると報告されています。
毎日10時間以上睡眠をとっている子供に比べて、8時間以下しか寝ていない子供は肥満度合いが3倍近くも高くなっている(調査報告はこちら)
経験的にも、睡眠不足が慢性的にある方は、甘いものや味が濃いものへの欲求が止められず、食欲が上手くコントロールできていない印象です。
寝ようと思えば寝られる方はよいのですが、寝たくても寝られない方もいらっしゃると思います。
そこで今回は、不眠症の原因と解消法について詳しく説明します。
理想の睡眠時間とは?
最低でも7時間は寝ましょう!ってどこかで聞いたことあると思います。
それは、睡眠時間が7時間の人の死亡率が一番低いという調査報告が出ているため、
様々なところで7時間と言われているのでしょう。
7時間も寝れてません!という方で、寝ようと思えば寝れるけどなんとなく夜更かししている方は、
すぐにでも早く寝て欲しいんですよね。
なんでかっていうと、短時間睡眠は食欲が増すだけでなく、心身に悪影響を及ぼす可能性があるからです。
睡眠不足は筋タンパク質合成を抑制し、筋肉量の減少につながる可能性がある(論文はこちら)
睡眠不足だとポジティブな社会的感情や他者とのつながりへの欲求が減少する(論文はこちら)
睡眠不足は全ての病気による死亡率の増加と関連しており、運動不足により悪化し、相乗効果がある可能性が示唆された(論文はこちら)
長時間睡眠も良くないとの報告もあります。寝過ぎが良くないって意外ですよね。
睡眠時間が短すぎても(5時間)長すぎても(12時間)2型糖尿病の発症リスクが高まる(論文はこちら)
睡眠時間が多くても少なくても全ての病気による死亡リスクは増加するが、そのリスクを有酸素運動と筋トレを行うことで減らすことができ、最適な睡眠時間(7~9時間)で有酸素運動と筋トレを行っていると死亡リスクが最も減少する(論文はこちら)
睡眠時間が6時間以下の短時間睡眠は、記憶力低下やアルツハイマー病に関与するアミロイドβの増加と関連しており、9時間以上の長時間睡眠も認知の低下と関連している(記事はこちら)
余談ですが、たまに5時間以下の睡眠でも全然問題ない!という方に遭遇しますが、
短時間睡眠が習慣化している方をショートスリーパーなんて言ったりしますよね。
ショートスリーパーかどうかは遺伝で決まります。
時々、訓練すればショートスリーパーになれる!という主張を目にしますが、
科学的な根拠は全くないので無理して短時間睡眠を身につけようとしないでくださいね。
不眠症の原因
眠りたいんだけど眠れない、夜中に目が覚めてしまう、そんな人は不眠症の可能性がありますが、
不眠症の原因は3つあると考えられています(3Pモデル)。
1. 素因 → 年齢、性別、性格など不眠症の発症のしやすさを左右するもの。心配性の人や、女性は男性よりも不眠症になりやすいなど。
2. 促進因子 → 素因を持つ人が促進因子が起きると発症の引き金になる。自分や家族が病気になる、災害が起きるなどのストレス。数日から数週間で自然と治るものが多い。
3. 持続因子 → 不眠症をこじらせる因子。カフェインの摂りすぎ、長い昼寝、寝室の環境など。
変わりにくい素因や促進因子をどうにかして変えるというよりも、持続因子をいかに減らすかがポイントになります。
代表的な持続因子と対処法は以下になります。
カフェインの摂りすぎ
カフェインは睡眠促進に関わる脳内化学物質アデノシンの効果をブロックすると言われています。
ブラックコーヒーですと1日4〜5杯までにしましょう。
コーヒー以外にも、お茶、コーラ、薬(風邪薬、頭痛薬、痛み止めなど)、栄養ドリンク、チョコレートにもカフェインが含まれています。
種類 | カフェイン量 (1日の上限は400mg、推奨量は200mg以下) |
コーヒー1杯(ブラック) | 90mg |
レッドブル 1本(330ml) | 100mg |
紅茶 200ml | 60mg |
ほうじ茶 200ml | 40mg |
ウーロン茶 200ml | 40mg |
コーラ 200ml | 15mg |
ミルクチョコ1枚(50g) | 14mg |
ハイカカオ70%チョコ1枚(50g) | 42mg |
エスタックEXネオ(風邪薬、6錠) | 75mg |
エスカップ(1本 100ml) | 50mg |
コーヒーを飲んでいなくても、お茶やチョコ、栄養ドリンクの合わせ技で推奨量を超えてしまっている方が意外といらっしゃいます。
不眠症の方は一度見直してみましょう。
また、カフェインの効果がなくなるまで8時間かかるため、午後2時以降はカフェインを含むものは控えた方がいいですね。
寝室の環境が整っていない
様々な研究から、寝室の環境が睡眠に影響を及ぼすことがわかってきています。
物が多い環境で暮らしている人は、物に囲まれていない人よりも寝つくまでに時間がかかり、睡眠の質が悪い(論文はこちら)
→寝室に物が多いと圧迫されている感覚になり脳を刺激します。
腰痛と睡眠障害のある被験者(平均9年半使用したマットレスで寝ている)を集め、ほどよい硬さの新しいマットレスを28日間使用して寝てもらうと、よく眠れるようになり痛みが減った(論文はこちら)
→長年使用している人は思い切って新調してもいいかもしれません。
大気汚染が多い地域に住む人は、空気の綺麗な地域に住む人よりも睡眠不足になる可能性が最大で60%高いことがわかった(論文はこちら)
→汚染物質が鼻や喉を刺激して睡眠に影響を与えると考えられています。気になる方は空気清浄機を寝室に置いてみましょう(なるべく運転音が静かな物が良いと思います)
眠る時に加重ブランケットを使用した不眠症の人は寝付きが良くなり、夜通し安眠しやすくなり、目覚めたときの気分がスッキリしていた(論文はこちら)
→加重ブランケットにはプラスチックのペレットが詰めてあり重くなっています。重みを体にかけることでマッサージされている感覚が再現されるため、セロトニン(睡眠ホルモンであるメラトニンの生成に関わる)の分泌を高めて睡眠の質を高めます。体重の10%の重さが推奨されていますが、掛け布団にもう一枚毛布を追加するだけでも同様の効果があります。
寝る前のスマホ
寝る前のスマホはやめましょう!と一度は聞いたことがあると思いますが、
ブルーライトは睡眠ホルモンであるメラトニンの生成を妨げると言われています。
メラトニンを生成し始める午後9〜11時まで、被験者を青色または赤色の光を発するコンピューター画面にさらし、就寝時にどのように影響するかを観察。ブルーライトにさらされた人の方がメラトニンの生成が少なく、睡眠時間が低下した(論文はこちら)
→メラトニンの生成が少なくなっただけでなく、体温を下げるメカニズムの活性化を阻止することで体温が一晩中維持され、眠りの質が悪くなると報告されています(寝る前に自然と体温が下がることで深い眠りにつけます)
就寝する2〜3時間前には電子機器の使用は控えてくださいね。
電子機器だけでなく、寝る前は部屋の明かりを暖色系のライトに切り替えると良いです。
また、暇があればSNSをチェックしているデジタル中毒になっている方は要注意です。
次々と更新されるSNSの最新情報をチェックし続けると、体が緊張したり不安を感じることがわかっています。
Facebookを常用している人に1週間休むよう依頼したところ、生活満足度が向上しストレスが少なくなった(論文はこちら)
メールを頻繁にチェックする事務員は心拍数が上昇したが、メールを5日間休むと心拍数が落ち着いた(論文はこちら)
不眠症の3つのタイプと解消法
不眠症には3つのタイプがあります。
1. 眠りたいけど眠れない
2. 途中で何回か目が覚めてしまう
3. 7時間以上眠れているけど眠りが浅く、スッキリ起きられない
それぞれのタイプに合った解消法を詳しく説明していきます。
1. 眠りたいけどなかなか眠れない
不眠症の方の話を聞いていると、
「仕事やプライベートでの悩み事を考えてしまって寝られない」
という方が結構いらっしゃいます。
そして、なるべく考えないように抑え込んで寝ようとしている方がほとんどです。
寝る前に心配事を抑え込もうとすると逆効果かもしれません。
被験者に眠る前に最も頭の中を支配しそうな心配(仕事の昇進や子供の進級、経済的な不安など)を一つ選んでもらった。二つのグループに分けられ、一つのグループは「考えを抑え込むように」と言われ、もう一つのグループは「リラックスして考えを自由に行き来させて」と言われた。考えを抑え込んだグループの方が、寝付くまでに時間がかかり睡眠が中断される回数が多かった(論文はこちら)
また、「明日も朝早いし・・・早く寝なきゃ!」というプレッシャーを感じている方が多いのではないでしょうか。
こんな報告があります。
不眠症の人を二つのグループに分け、一つ目のグループは通常通り寝てもらい、二つ目のグループはベッドに横になって目を開いたまま長く起きてもらった。長く起きていようとしたグループの方が早く入眠し、眠ることへの不安が少なくなった(論文はこちら)
「眠らなければ」というプレッシャーが交感神経を優位にさせ、
「リラックスした状態で自然と眠気がきて眠る」という眠りのプロセスから遠ざけてしまいます。
2. 途中で何回か目が覚めてしまう
夜中に目が覚めた時、「あ〜また目が覚めてしまった・・・ここから眠れなくなる・・・」と落ち込んでいませんか?
実は一晩に数回、目が覚めることはごく普通のことだと言われています。
人間は平均90分のサイクルで、ノンレム睡眠とレム睡眠を繰り返します。
まずはノンレム睡眠から始まり、一気に深い眠りに入ります。
眠りについてから1時間ほど経つと、徐々に眠りが浅くなりレム睡眠へと移行します。
一つのサイクルが終わると、次のサイクルに移行する前に短時間目が覚めることがあります。
「どうせ寝れなくなるんだ・・・」と思ってしまうと本当に寝れなくなるので、
「目が覚めることは普通のことだし、目をつぶっていればそのうち寝れるだろう」ぐらいの気持ちでいましょう。
ただ、明確な原因があって目が覚めてしまう方もいらっしゃいます。
● 軽度の脱水
喉の渇きに気づいたり、水分を求めて体が動くことで目が覚めてしまうことがあります。人間は1日約2.5リットルの水分が必要だと言われていますが、
約900mlは食事から摂れていて、200〜300mlは体内の水分が再利用されるので(代謝水)、残りの1.2〜1.3ℓを飲めると良いですね。
なかなか飲めない方は、寝る前にコップ1杯の水を飲むだけでも違うかもしれません。
● アルコール
寝付きを良くするためにお酒を薬代わりに飲んでいる方がいらっしゃいますが、お酒を飲んだ日は途中で目が覚めてしまいませんか?
アルコールは鎮静剤として作用して寝付きを良くして深く眠れますが、睡眠後半になるとアルコールが分解され目が冴えたり気分がそわそわしたりします。
また、汗やいびきかきやすくなったり、深夜にトイレに行く可能性が高くなります。
● 低血糖
皆さまに食生活を聞くと、夕食に炭水化物(特に白米)を抜いている方が結構いらっしゃいます。
基本的にウェルボでは、太りやすい体質になるため糖質制限はオススメしていないのですが(低糖質ダイエット 3つの注意点)、睡眠の面からもオススメはしていません。
食後徐々に血糖値が上がり、1〜2時間するとピークに達します。そこから緩やかに血糖値が下降し、食後3〜4時間には食前まで血糖値が下がっていきます。
夕食に炭水化物を摂らないと血糖値が下がりやすくなり、夜中に低血糖になってしまいます。
血糖値を維持するために交感神経が高まり、緊張状態になるため目が覚めてしまいます。
寝る前にハチミツをティースプーン1杯食べて睡眠が改善される場合は、低血糖が原因かもしれません。
いきなり炭水化物を増やすことに抵抗がある方は、まずは白米100gから食べて、最終的には150g(普通盛り)まで増やせると良いですね。
3. 眠れているけど眠りが浅く、スッキリ起きられない
眠りが浅くなってしまう原因は3つあります。
● いびき
自分やパートナーのいびきが原因で眠りが浅くなっている可能性があります。もちろんダイエットは大事ですが、口腔咽頭のエクササイズがオススメです。
いびきは上気道の柔らかい組織や筋肉が緩んだ状態で振動する際に発生しますので、これらの筋肉を引き締めてゆるみを少なくするといびきをかきにくくなります。
● 逆流性食道炎
胸焼けの症状がある方は逆流性食道炎の可能性があります。対症療法にはなりますが、左側を下にして寝ると胃酸の逆流を減らせることがわかっています。
寝ている最中に胸がムカムカして気になる方はぜひ試して下さい。
● 睡眠時無呼吸症候群
眠っている時に大きないびきをかき10秒以上呼吸が止まる場合は睡眠時無呼吸症候群かもしれません。
睡眠が何度も中断されるので、レム睡眠とノンレム睡眠のステージ3(深い睡眠)が少なくなり、熟睡できていないため疲れがとれません。
過体重の方はまず痩せることが大事ですが、睡眠中に鼻から空気を送り込むことで気道が塞がれるのを防ぐCPAP療法も同時並行で行うと良いでしょう。
また、喫煙が習慣になっている人は睡眠時無呼吸症候群の原因かもしれません。
喫煙者は、非喫煙者や元喫煙者に比べて睡眠時無呼吸症候群の可能性が2.5倍高い(論文はこちら)
話は変わりますが、長時間昼寝するとスッキリ起きられず、起きた後しばらくボーッとした経験ありませんか?
先ほど睡眠サイクルのお話をしましたが、入眠してから15〜20分でノンレム睡眠のステージ2(N2)に入ります。
この時に昼寝をやめるとスッキリ起きられるのですが、それ以上寝てしまうと深い眠りに入ってしまうので寝起きが不快になります。
昼寝する際はタイマーを15〜20分にセットしてくださいね(時間帯は深部体温が少し下がる午後2時がベストです)。
最後に
「トレーニングした日はすごく良く眠れます!」
「トレーニングし始めてから寝付きが良くなりました!」と言われることがあります。
実際、運動は睡眠に良い影響を及ぼすとの研究結果が出ています。
活発に動くことが年齢に関係なく、良い眠りに大きな影響を与える(論文はこちら)
最低週2回、30分以上の定期的な運動と高タンパクの摂取の組み合わせが、良好な睡眠の質に寄与する。運動はセロトニンレベルを上昇させ、必須アミノ酸のトリプトファンはメラトニンの合成を促し、睡眠の質を改善させる(論文はこちら)
運動の内容は関係ないようですので、不眠症に悩んでいる方はとりあえず散歩から始めても良いかもしれません。
今回ご紹介した不眠症の原因や解消法はごく一部になります。
もしお伝えした内容を試しても変わらない場合は一度ご相談ください。
今回様々な睡眠に関する論文をご紹介しましたが、他にも色々な研究がされています。
皆さまのダイエット・健康増進の参考になれば幸いです。
カロリー制限ダイエットをしていても、睡眠不足だと脂肪量が減りにくく、筋肉量が減りやすくなる(論文はこちら)
規則正しい睡眠習慣から、一晩の不規則な睡眠制限を行うと、翌日のエネルギー摂取量が増加し、脂肪とタンパク質の摂取量が増え、空腹感を感じるようになる(論文はこちら)
一晩の徹夜は筋肉の元となる筋タンパク質の合成を妨げる(論文はこちら)
運動不足と睡眠不足の成人は全ての病気による死亡リスクが上昇する(論文はこちら)
カロリー制限ダイエット中にタンパク質の摂取量を増やすと、睡眠の質が改善することが示唆された(論文はこちら)
乳製品、果物、野菜は睡眠の質を高める可能性があるが、糖分の多い食品や肉の摂取量が増えると質が低下する可能性がある(論文はこちら)
炭水化物の摂取量が少ないとノンレム睡眠(深い睡眠)が増加し、炭水化物の摂取量が多いとレム睡眠が延長される。(論文はこちら)
寝る1〜2時間前に10分程度のシャワーを浴びたりお風呂に入ると寝つきが良くなる(論文はこちら)
睡眠の質の向上は、精神的健康、うつ病、不安、ストレスなどのメンタルヘルスの向上につながる(論文はこちら)